「ティファニーの店内にいるみたいな気持ちにさせてくれる場所が、この現実の世界のどこかに見つかれば、家具も揃え、猫に名前をつけてやることだってできるのにな。」(カポーティ『ティファニーで朝食を』)
ちせいです。
今日は僕の休日のモーニングルーティンについて話そうと思う。
ところで、人間は誰にだってストレスを解消するための、または少なくとも何のストレスも感じることなく、ただ落ち着くためだけのストレスフリーな場所ないし空間というものを求めるものだし、そして実際に誰しもがそういう場所を持っている。例えば家とか別荘とかビーチとか行きつけのカフェやバーだとかティファニーの店内とか、人によって種々さまざまだ。
僕にも、そこに行けば、ただそこにいるだけでストレスを解消したり、心穏やかに過ごせる場所というのが少なからずある。例えば大濠公園とか新宿御苑とか慶應義塾大学三田キャンパスとかN700系新幹線の車内とか、そういうところだ。
ただ、そういう場所は行きたくてもなかなか行けるところではない。大濠公園ならまだしも、福岡在住の僕にとって、ストレスが溜まったり、どうしても心が落ち着かなかったりした時に、新宿御苑や慶應のキャンパスだとか新幹線の車内だとかに気軽に行けるわけではない。
だから僕は、家の自分の部屋を、常にそういう場所であれるようにするために努めている。具体的には、退屈しない部屋。極端に言えば、丸一カ月くらい一歩もこの部屋から出られなくなったとしても快適に過ごせてかつ暇にならない部屋だ。部屋の全体像に関してはまたいつか紹介するが、今回は、そんな僕の部屋で、僕が休日にやる優雅なモーニングルーティンを紹介しよう。
僕が休日に起きてから午前中にやること、それは、クラシックを聴きながら紅茶を飲むことだ。
僕は、クラシック音楽には、大きく朝、あるいは午前中に聴きくべき音楽と、夕方や夜、日が落ちて暗くなってから聴くべき音楽があると思っている。もちろん一概には言えないが、例えば前者はバロック時代のイタリア音楽やモーツアルトなど、明るくて軽快な類の音楽で、後者はベートーヴェンやブラームスなど、ドイツの内省的な音楽などだ。


僕は、朝紅茶を飲むときは、だいたい決まってヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲か、モーツアルトのクラリネット五重奏曲や交響曲第38番〈プラハ〉を聴くことが多い。時々バッハのイタリア協奏曲をヴァルヒャの演奏で聴くことはあるけれど、朝っぱらからパイプオルガンというのは結構重いと感じることが多い。やはり心躍るような軽快な音楽がいいし、そうなったらもっぱらヴィヴァルディを聴くことが常になる。
今日も、僕はヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲を選曲した。いわゆる〈四季〉と、〈調和の幻想〉というヴァイオリン協奏曲集だ。〈調和の幻想〉は12曲の協奏曲から構成されるが、僕の手元にあるレコードはそのうちの第6番、8番、10番、11番が収録されている。また〈四季〉も〈調和の幻想〉も共にイ・ムジチ(イタリアの弦楽合奏団)による演奏だ。イタリアの曲はイタリア人が、ドイツの曲はドイツ人が、ロシアの曲はロシア人が演奏するのが一番良い、というのが僕の信念だ。
レコードをセットし、ターンテーブルに針を落とす。優雅な曲が流れ始めると、僕のティータイムがスタートだ。

紅茶と茶器にも、もちろんこだわりがある。僕は基本、茶葉はフォートナム&メイソンでしか買わない。理由は本当に単純で、英国王室御用達のブランドだからだ。どの茶葉もだいたい250gで4000円弱という驚異的な価格だが、それだけ味と香りは信頼に値すると信じて買い続けている。それに、250gあれば毎日飲んでも2ケ月は持つ。そう考えれば、別に高くても損したとは思わない。

茶器ももちろん、英国王室御用達ブランド、ウェッジウッドのコーヌコピアというシリーズだ。もう廃盤になったシリーズのため、これらはアウトレットショップとメルカリによって手に入れた。大理石を思わせるような独特な模様をベージュで表現している所が究極のお気に入りポイントだ。ちなみにコーヌコピアというのは古代ギリシア神話に由来する、豊かさを象徴する角のことで、「豊穣の角」とも呼ばれているらしい。こういう古代の神話や歴史に由来する名前を付けるところもウェッジウッドの素晴らしい点だ。
上品さを極めた音楽を聴きながら、上品さを極めた紅茶を上品さを極めた茶器によって、味わう。福岡の田舎の家に住んでいながら、上流貴族になった気分だ。そしてこういう人間的に優越した気分こそ、毎日過ごす自分の部屋に新鮮さをもたらしてくれる。
もしあなたが自分のメンタルをケアできる空間に困っていたり、退屈な毎日にマンネリしていたり、日々のルーティンのランクを少し上げたいけど具体的にどうすればいいか分からずにいるのなら、僕からできるアドバイスはただ一つ、貴族になることだ。形だけでもいい、でも金をかけていいものを買うことだ。高価なものは、飽きないようにできている。そういうものだ。そしてその良いものを使える環境を作ることだ。そうすれば、とりあえずその日一日は退屈せずに生きれるさ。


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