なんで僕がうつ病に!?①~婚約破棄の巻~

うつ病体験記

「あまり強い言葉を遣うなよ。弱く見えるぞ。」(By 藍染惣右介)

ちせいです。

今回は、なぜ僕がうつ病になったのか、その発端となった事件について話したいと思う。何巻かに分けて少し長い茶番になるが、それでもここで語られることはすべて事実だ。興味があれば、しばし、お付き合い願いたい。

■2025年3月11日

 この日、僕はいつも通りに仕事を終えて、彼女(婚約者)の待つ家に帰宅した。いつも通り鍵を開け、いつも通り扉を開き、いつも通り靴を脱いでキッチンを通り抜け、リビングに向かった。キッチンとリビングを隔てる扉を開けると、彼女は私に背を向ける形でソファーに座り、ドライヤーで髪を乾かしていた。これもよくあることだった。彼女はまだ、僕が帰ってきたことに気づいていなかった。だから僕はそのまま彼女の目の前までまわって座椅子に腰掛けた。彼女は少し驚いてドライヤーを切り、消えそうな声で「おかえり」、と言った。

 なんだか様子が変だ、と僕はこの時点で気づいていた。いつもなら笑ってみせる彼女の顔が、この日はむしろ今にも目から涙が溢れてしまいそうな悲観的な顔をしていた。そのとき僕は、職場で何かあったな、と直感した。例えばそこそこのミスをしたか、理不尽に上司に怒られたか、わけのわからないクレームをつけられたか、まあそんなところだろうと思った。そしてそうであるなら、彼女は自分から僕に話して来るだろうから、僕はただいつも通りに接することを心がけた。

晩御飯のペッパーランチを食べて落ち着いたころだった。彼女が僕に、話がある、と思い口を開いた。

「結婚を延期して欲しい。」

彼女とは付き合ってまもなく7年目に突入するころだった。2024年の10月にプロポーズをして、25年の2月には二人でティファニーに結婚指輪を買いに行った。僕は、たぶん彼女がいわゆるマリッジブルーに陥って、環境が変わることへの不安が募ったのだろうと思い、一週間実家に戻ることにした。少し一人になる時間を作ってあげれば落ち着くだろう。それが僕の判断だった。そしてその判断はまさに僕にとって致命的な判断だった。

その一週間後、つまり2025年の3月17日、僕は彼女に呼ばれ、そこで別れて欲しいと言われた。できるだけ冷静であろうとしたつもりだった。でも、どれだけ自分が冷静を装っていたところで、結局僕は頭に血が上った状態で彼女の話を聴き、心ない言葉を吐いて出ていった。

その後の事ははっきりいってよく覚えていない。彼女がなぜ別れたいと言ったのか、その理由も結局今でもよくわかっていない。たしか僕の年収が低いせいだったと思う。僕はボーナスがあってないような某アパレルの販売員で、周りに比べればお世辞にも良い年収とは言えなかった。対して彼女は僕より四つ年下だったが、彼女の年収は僕より百万円くらいは多かった。だから将来的な金銭面での不安を抱えるのは無理もないことではあったのだ。あるいは他に決定的な理由があったのかもしれない。例えば、僕は当時小説家を目指していて、三十歳までに小説家としてデビューできなかったら諦めるつもりだった。だからこそ、当時は転職して自分の年収を上げようなんて考えてもいなかった。ただひたすら、僕は物語を書き続けていたのだ。最初はそういう僕を彼女は受け入れてくれていた。しかしいざ結婚ということになると、やはりいばらの道を進もうとしている自分にたいして少しづつ不満が募っていったのかもしれない。

いずれにしても、間違いなく言えることは、僕は、自分のせいで、僕が6年間積み上げてきたもの、そして未来にも続くはずであった、もっとも大切なもの、そしてもっとも欲しかったものを失ったのだ。

僕は彼女との別れ際に、愛より金を選ぶんだね、と言って、さらに絶対後悔するなよ、と言った。そして情けないことに、果てしなく後悔したのは僕の方だった。心にもない強い言葉を放って、僕は自分の弱さを晒しただけだった。本当に強い人間なら、彼女の今後の幸福を願って黙って身を引くことができたのだろう。別れてから数日後、女々しい僕は彼女にもう一度やり直そうという旨のLINEを送ったり、何通かポストに手紙を入れたりした。そして何の甲斐もなく、僕は自分で自分に目も当てられないくらいただただ女々しくて情けない男で終わったのだった。僕はいつまでも弱者であるだけでなく、同時に敗北者でもあったのだ。そしてここから、彼女に別れるという選択をさせてしまった自分のポンコツっぷりと、別れた後に後悔して寄りを戻そうとしてあらゆる手を尽くした挙句何の成果も得られずにただ未練がましい男として終わった自分自身への羞恥によって、僕の精神崩壊が始まっていったのだった。

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